筋トレをすると、なぜ筋肉は大きくなるのでしょうか。「筋肉を傷つけて、治るときに大きくなる」と聞いたことがある人もいるかもしれません。しかし、現在の筋肥大研究では、それだけで説明するのは正確ではありません。筋肉の成長には、
筋肉への機械的な負荷
筋タンパク質の合成
細胞内のシグナル
サテライト細胞
トレーニング量
栄養
回復
など、多くの要素が関係しています。(参考文献参照)
よくある説明ですが、「筋肉痛になるほど壊すこと」が筋肥大の目的ではありません。
この記事の結論
かなりシンプルにすると、
筋トレで筋肉に負荷をかける
↓
身体の中で筋肉を適応させるシグナルが起こる
↓
筋タンパク質の合成などが高まる
↓
これを何度も繰り返す
↓
筋線維が少しずつ大きくなる
これが筋肥大の基本イメージです。
筋肥大とは?
筋肥大とは、筋肉を構成する筋線維が太くなり、筋肉全体のサイズが大きくなることを指します。筋トレを数か月続けて、
腕が太くなる
胸板が厚くなる
脚が太くなる
といった変化が起こるのが分かりやすい例です。
筋肉は「刺激に適応する」
筋肉は、与えられた負荷へ適応する性質があります。今まで持ったことのない重量を繰り返し扱うと、身体はそのストレスへ対応しようとします。
レジスタンストレーニングは、筋肥大につながる内部の仕組みを動かす非常に強力な外的刺激です。(参考文献参照)つまり、筋トレ=身体に「この負荷へ適応する必要がある」と知らせる刺激と考えると分かりやすいでしょう。
筋肉の成長に関係する「筋タンパク質合成」
筋肉の中では常に、筋タンパク質合成と筋タンパク質分解が起こっています。筋タンパク質合成は、新しい筋タンパク質を作る働きです。レジスタンストレーニングを行うと、この筋タンパク質合成が高まります。
さらにタンパク質を摂取することでも筋タンパク質合成は刺激されます。(参考文献参照)
かなり良いイメージです。
筋トレ1回で筋肉が大きくなるわけではない
筋トレを1回すれば、その後に筋タンパク質合成は高まります。しかし、1回の筋トレだけで目に見えるほど筋肉が増えるわけではありません。
トレーニングによる筋タンパク質合成の上昇を、長期間何度も積み重ねることで筋肥大につながると考えられています。(参考文献参照)だから筋肥大には、継続が必要です。
mTORって何?
筋肥大について調べると、mTORという言葉を見かけることがあります。mTORC1は筋肉の成長に関係する重要な細胞内シグナルの一つです。
機械的な負荷などを受けることで関連経路が活性化し、タンパク質合成など筋肥大につながる反応へ関わります。(参考文献参照)ただし初心者が、「今日はmTORをどれくらい活性化できたかな?」と考える必要はありません。実践では、
十分な筋トレ
十分なタンパク質
十分なエネルギー
回復
を整える方が重要です。
サテライト細胞とは?
筋肉には、サテライト細胞と呼ばれる細胞があります。筋肉へ負荷がかかった際に活性化し、筋線維の成長や修復へ関与すると考えられています。
筋肥大が大きい人ではサテライト細胞の反応が大きい可能性も研究されています。(参考文献参照)
「筋肉を壊すほど大きくなる」は正しい?
これは注意が必要です。以前は、
筋肉を傷つける
↓
修復する
↓
以前より大きくなる
という説明がよく使われました。しかし現在では、筋損傷そのものが筋肥大の必須条件とは考えられていません。筋トレ開始直後は筋損傷やむくみによって、一時的に筋肉サイズが大きく測定されることがあります。
その後トレーニングへ慣れてから、本格的な筋肥大が観察されるようになるとするレビューもあります。(参考文献参照)
その通りです。
筋肉痛は筋肥大の証拠ではない
筋肉痛が強いと、「昨日はいい筋トレだった!」と思いやすいですが、筋肉痛の強さと筋肥大を同じものとして扱うことはできません。新しい種目を行ったり、久しぶりに筋トレしたりすると筋肉痛は強くなりやすいです。
しかしトレーニングへ慣れると、同じように筋肉へ刺激を与えていても筋肉痛は弱くなることがあります。そのため、筋肉痛をトレーニング成果の採点表にしないことが大切です。
筋肉を大きくする刺激は何?
筋肥大には複雑な仕組みがありますが、トレーニング側で特に重要なのが、筋肉へ十分な張力をかけることです。重量そのものだけではありません。軽い重量でも十分努力して行えば、筋肥大を起こすことができます。そのため、
「重い=筋肥大」「軽い=意味なし」という単純な話ではありません。
だんだん重くする必要はある?
筋肉は刺激へ適応します。ずっと同じ重量、同じ回数、同じセット、同じ努力度を続けていると、その刺激へ慣れていきます。そのため、
重量を上げる
回数を増やす
セットを必要に応じて増やす
フォームを改善する
可動域を改善する
などによって、少しずつトレーニングを進歩させます。
タンパク質だけでは筋肉は増えない?
タンパク質は筋肉の重要な材料ですが、大量に食べるだけで勝手に大きな筋肉がつくわけではありません。レジスタンストレーニングと十分なタンパク質摂取を組み合わせることが、筋肉量増加の重要な刺激になります。(参考文献参照)
だから、筋トレ+食事の両方が必要です。
カロリーも重要
タンパク質が足りていても、大きなカロリー不足が続くと筋肉量増加が難しくなります。
エネルギー不足と筋トレを検討したメタ分析では、エネルギー不足によって除脂肪量の増加が妨げられ、約500kcal/日の不足では除脂肪量増加が止まる可能性が示されました。(参考文献参照)筋肉を大きくしたい人は、食べなさすぎ
にも注意しましょう。
筋肥大には個人差がある
同じ筋トレをしても、全員が同じだけ筋肉を増やすわけではありません。研究でも、筋肥大に対する反応には大きな個人差が確認されています。(参考文献参照)そのため、SNSで見た他人と、「3か月で腕が何cm増えた」
などを単純比較する必要はありません。
初心者が覚えるべきことはシンプル
ここまで細胞の話をしましたが、実践でやることは難しくありません。
1. 筋トレする
筋肉へ十分な刺激を与える。
2. 少しずつ成長させる
重量・回数などを記録する。
3. タンパク質を摂る
目安として体重×1.6g前後から考える。
4. 食べなさすぎない
筋肉を増やしたいなら極端なカロリー不足を避ける。
5. 休む
睡眠と休養を確保する。
6. 続ける
数日ではなく数か月・数年単位で考える。
よくある質問
筋肉痛がなくても筋肥大する?
します。筋肉痛は筋肥大の必須条件ではありません。
筋肉を壊さないと大きくならない?
筋損傷そのものを増やすことが目的ではありません。筋損傷が大きいトレーニング初期には、むくみが筋サイズ増加として測定される場合もあります。(参考文献参照)
筋トレした直後に筋肉が太くなるのは筋肥大?
多くはパンプや水分変化など一時的な要素を含みます。長期的な筋肥大とは分けて考えます。
プロテインだけで筋肥大する?
筋肉づくりでは、筋トレとタンパク質摂取の組み合わせが重要です。
まとめ
筋肥大とは、筋トレなどの刺激へ適応して、筋線維が長期的に大きくなることです。筋肉を破壊することが目的ではありません。重要なのは、
刺激
+
タンパク質
+
エネルギー
+
回復
+
継続
です。
